男性の泌尿器科疾患
男性の泌尿器疾患では、頻尿・残尿感・排尿しにくい・血尿など排尿に関する症状を起こすことが多くなっています。他にも、陰部の痛みや熱感、発熱などを起こすこともあります。
男性の泌尿器疾患では腎臓・尿管・膀胱・尿道といった尿路だけでなく、前立腺に起こる疾患も多いため、上記のような症状に気付いたら早めの受診をおすすめしています。
なお、泌尿器に問題がなく、皮膚のかゆみや湿疹など皮膚疾患が疑われる場合には、連携している皮膚科クリニックをご紹介しています。
前立腺疾患
前立線肥大症
前立腺は加齢によって肥大しやすいため、年齢が上がるにつれて発症頻度が上昇します。排尿障害で気付くケースが多いのですが、自覚症状なく肥大が進行している場合もあります。
早期に昼間の頻尿、就寝中に目覚めてトイレへ行く、尿の勢いが弱い、尿がうまく出ない、残尿感があるなど、軽い排尿障害を起こすことがあります。ただし、こうした症状が現れないまま進行して残尿が増加し、気付かない間に尿が膀胱にたまって排出できない慢性尿閉を起こし、尿失禁が起こってはじめて気付く場合もあります。
前立腺肥大症については、別ページで詳しく記載しておりますので、そちらをご参照ください。
急性前立腺炎
尿道から入ってきた細菌の増殖などによって前立腺が炎症を起こしています。
症状
38℃以上の発熱や、排尿痛・排尿困難・頻尿など排尿に関する症状が現れます。進行すると尿が膀胱にたまって排出できない尿閉を起こすこともあります。
診察
症状の内容や起こりはじめた時期などを問診で詳しく伺い、尿検査で細菌の有無、白血球数を確認します。さらに直腸診を行って前立腺の状態、熱感・圧痛の有無を確認します。なお、炎症による症状が重い場合には入院による治療が必要になりますので、その際には入院が可能な連携の医療機関をご紹介し、速やかに適切な治療を受けていただけるようにしています。
治療
抗生物質の内服薬を用いた治療を行います。状態によっては点滴による投与を行います。適切な治療によって数日で症状が改善しますが、ここで治療をやめてしまうと耐性菌ができて治療が難しくなってしまいます。検査で炎症が治ったことを確認するまでしっかり治療を続けましょう。
包茎
真性包茎
包皮を剥くことができず、亀頭を露出できない状態です。子どもの包茎は自然に解消するケースも多く、軟膏による治療が有効なこともあります。ただし、亀頭などの炎症を繰り返す場合には手術を検討します。嵌頓包茎になってしまった場合は、無理に戻さずできるだけ早く受診してください。
成長してからも真性包茎で亀頭が露出できない場合、性交渉への不安や支障が生じるケースがよくあります。また、真性包茎は陰茎がん発症リスクが高くなることから、手術の検討が必要です。
仮性包茎
通常は包茎状態ですが、包皮を下げて亀頭を露出できます。嵌頓包茎を起こす場合や、炎症を繰り返す場合には手術を検討します。
嵌頓(かんとん)包茎
下げた包皮が陰茎を強く締め付けて包皮を戻せない状態で、締め付けによって血液が届かない循環不全を起こして激しい痛みや腫れを起こします。壊死などにつながる危険な状態なので、すぐに受診してください。状態によっては緊急手術が必要になる場合もあります。無理に戻そうとすると悪化する可能性が高いため、嵌頓包茎を起こした場合には速やかに医療機関を受診してください。
泌尿器のがん
腎細胞がん、腎盂尿管がん、膀胱がん、そして男性の前立腺がんや精巣がんなどがあります。早期発見によってQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を低下させずに治せる可能性が高くなります。男性にとって発症が最も多いがんは前立腺がんですが、精度が高いPSA(前立腺特異抗原)が人間ドックなどでも行われるようになって、早期発見できるケースが増えてきています。
また、当院ではがん患者様のフォローアップも行っておりますので。お気軽にご相談ください。
前立腺がん
前立腺がんは尿道を囲む内側ではなく、外側にできやすい傾向があるため、排尿に関する症状が出にくく発見が遅れるケースが多かったのですが、PSA(前立腺特異抗原)検査が普及して早期発見できるケースが増えています。
症状
自覚症状に乏しいため、早期発見できるケースのほとんどはPSA(前立腺特異抗原)検査によって見つかっています。前立腺肥大と同様に頻尿、排尿困難、排尿障害が現れることもありますので、こうした症状がある場合にはPSA(前立腺特異抗原)検査を受けることが重要です。
診察
症状の内容や起こりはじめた時期などについてうかがった上で検査を行います。血液を採取してPSA(前立腺特異抗原)検査を行い、直腸診を行ってしこりの有無を確かめます。また、経直腸超音波検査やMRI検査などを行うこともあります。精密検査として前立腺組織を採取する前立腺生検が必要な場合には、連携している高度医療機関をご紹介して検査を受けていただいています。
治療
骨やリンパ節などに転移していない早期前立腺がんは、手術や放射線による治療を行います。この場合の10年生存率は90%以上とされています。進行がんは転移の状態によって大きく変わるため、年齢や基礎疾患も考慮した上で治療方針を決めていきます。前立腺がんの主な治療法には、内分泌療法・根治的前立腺全摘術・放射線療法があります。
内分泌療法
手術適用ではないケースで主に行われるホルモン療法です。注射や内服によって男性ホルモンの分泌・働きを抑制することで、がん細胞増殖を抑制します。最初に行った場合の有効率は80%以上ですが、治療抵抗性を持って進行することもあります。そのため、治療後の経過観察が必要です。
根治的前立腺切除術
75歳以下の方を中心に行われます。現在は身体へのダメージが少なく回復が早い腹腔鏡やロボットを用いた手法が用いられるようになってきています。術後の尿失禁・勃起不全を起こす可能性がある点がデメリットです。
放射線療法
外部照射や組織内照射による根治的治療、進行前立腺がんの進行抑制のための転移部位への照射などに用いられます。75歳以上でも行えるため、幅広い方の治療が可能です。照射後、尿失禁や排尿障害を起こす可能性があります。
高密度焦点式超音波治療
保険適用されていない治療法で、早期前立腺がんに有効とされています。超音波を照射してがんの部分だけを熱凝固壊死させます。切開などの必要はなく、直腸から挿入したプローブによる治療で、身体への負担が少なく、回復も早い治療法です。治療後の排尿障害、直腸障害などを起こす可能性があります。
膀胱がん
見た目ではっきりわかる血尿が早期に現れやすいため、比較的早期発見されることが多くなっています。血尿、頻尿、残尿感などがあり、膀胱炎の症状と似ていますが、痛みはないことが多くなっています。進行すると尿管出口が閉塞して尿が腎臓にたまり、水腎症による背中の痛みを起こすこともあります。血尿、頻尿、残尿感、背中の痛みなどがあった場合は、できるだけ早く受診してください。
腎細胞がん(腎がん)
血液をろ過して尿をつくる尿細管細胞にがんが生じている状態で、早期には症状がほとんどなく、血尿や検診で発見されることが多いとされています。60歳以上の男性に多く、高血圧・肥満・喫煙は危険因子です。発症には遺伝子異常や腎臓疾患などの関与も指摘されています。
進行しても症状に乏しいケースが多いのですが、腹部のしこり、血尿、発熱、食欲不振や体重減少、貧血、白血球増加、高カルシウム血症、高血圧などが症状として現れることもあります。また、転移するまで発見されないことも珍しくありません。
腎盂尿管がん
尿は腎臓でつくられて腎盂から尿管を通じて膀胱に運ばれ、尿道を通って排出されます。腎盂や尿管の尿路上皮細胞のどちらか、あるいは両方にがんが生じているのが腎盂尿管がんです。尿路上皮細胞は膀胱までつながっているため、同時あるいは腎盂尿管がんの治療後に膀胱がんになることもあります。
発症の原因はまだよくわかっていませんが、喫煙が危険因子であり、60歳以上の男性に多く発症します。
血液の塊が出てくるような肉眼的血尿を早期に生じることもありますが、検診で発見されることも少なくありません。血液で尿管が閉塞して水腎症になり、背中の痛みを起こすこともあります。血尿や背中の痛みがありましたら、できるだけ早く受診してください。
精巣がん
精巣は左右の陰嚢に1つずつあって、精子をつくって男性ホルモンを分泌しています。年間約10万人に1人の頻度で発症するとされています。乳幼児期の停留精巣などによって発生するとされていて、精子をつくる精母細胞からがんが発生すると考えられていますが、はっきりとした原因はまだよくわかっていません。
進行するまでほとんど自覚症状がなく、進行してから片側の精巣の腫れ、急激に大きくなる、しこり、違和感などを起こすことがあります。痛みを伴わないことが多くあります。転移していても根治できる可能性があり、予後は比較的良好とされていますので、症状に気付いたらすぐに受診してください。