高血圧とは
血圧は血液が動脈の血管壁を押す圧力のことで、心臓が収縮した収縮期血圧が最も高く、心臓が拡張した拡張期血圧が最も低くなります。血圧を測ると2種類の数が表示されるのは、数字が大きい方が収縮期血圧で、小さい方が拡張期血圧です。血圧の値は、心臓から送り出される血液の量、血管壁の弾力性、血管内径の太さよって変化します。
正常な血圧は、収縮期血圧130mmHg以下、拡張期血圧85mmHg以下とされていますが、血圧は季節や時間、運動、緊張、気温の変化などによってもかなり変化するため、1度これよりも高い血圧が出たから高血圧と診断されるわけではありません。高血圧は、長期間にわたって収縮期血圧140mmHg、あるいは拡張期血圧90mmHgよりも高い状態が続いている状態で、片方だけが高い場合も高血圧に含まれます。ただし、家庭で計測するよりも診察室で計測する方が高く出やすい傾向があるため、家庭で計測した場合は収縮期血圧135mmHg・拡張期血圧85mmHgが基準になっています。
現在は精度が高い家庭用血圧計が手軽に購入できますので、ご自宅で毎日血圧を測定して記録をつけましょう。
原因
本態性高血圧
遺伝的要因、塩分の過剰摂取、肥満、飲酒・喫煙、運動不足、ストレスなど、様々な要因が複雑に関与して発症するとされています。
二次性高血圧
腎臓、内分泌、心臓・血管といった循環器などの疾患の症状として表れている高血圧です。原因疾患を特定することが重要です。薬剤誘発性高血圧、妊娠中毒症にともなう高血圧などもあります。
症状
高血圧は自覚症状に乏しく、あったとしても頭が重い・頭痛・めまい・耳鳴りなど日常的な不調程度のものがほとんどを占めます。高血圧を放置して動脈硬化がかなり進んでくると、動悸や息苦しさ、むくみ、しびれ、夜中トイレに起きる、胸の痛みなど、かなり危険なサインが症状として現れてきます。
高血圧で動脈硬化が進むと動脈の血管は硬く・もろくなって、脳・心臓・腎臓などに大きなダメージを及ぼすことがあります。脳卒中、狭心症や心筋梗塞などをある日突然起こしてしまう可能性が高くなってしまうのです。心臓病の三大危険因子は、高血圧・脂質異常症(高脂血症)、喫煙と言われており、脳出血の最大危険因子は高血圧だとされています。
高血圧によって起こる深刻な合併症
脳卒中(脳出血・脳梗塞)
脳出血は、脳内の細い動脈血管が硬く・もろくなって、そこに高い血圧がかかって血管が破裂した状態です。脳梗塞は動脈硬化によって起こった脳内血管の閉塞によって、その先に血液が流れなくなり、脳細胞が壊死してしまう状態です。どちらも、脳血管の障害が起こった位置などによって起こる障害の内容や程度は変わります。
心疾患
心臓に酸素や栄養素を送る冠動脈に動脈硬化が起こって狭窄すると狭心症を、閉塞すると心筋梗塞を起こします。また、動脈血管が硬くなると血流が悪化するため、心臓は送り出す力を強くして補おうとしてオーバーワークを起こし、心臓壁が分厚くなる心肥大を起こし、心不全につながる可能性があります。
腎疾患
腎臓は血液を濾過して尿を作っています。高血圧によって腎臓にダメージが蓄積するとむくみなどを起こし、最終的には腎不全を発症して人工透析が必要になる可能性があります。
治療
薬物療法では、様々な作用を持った薬剤がありますので、患者様の状態やライフスタイルに合わせて処方しています。生活習慣の改善で効果が現れてきたら、医師と相談しながら慎重に減薬することも可能です。
また、適した運動内容は、他の疾患の有無などによっても変わります。無理のない範囲でできるように、医師と相談してからはじめてください。
生活習慣の改善が重要です
生活習慣の改善は高血圧治療に不可欠で、他の生活習慣病の発症や進行を防ぐためにも役立ちます。食事・運動・その他の生活習慣改善には、効果を得やすいポイントがいくつかあります。
減塩について
食事療法で高血圧改善に役立つケースが多いのは減塩です。塩分は水分を引き寄せるため塩分が過剰になると血液の量が増えて血管壁への圧力が上昇します。また、塩分が血管を収縮させるため、さらに血圧が上がりやすくなります。
日本人は食塩の摂取量が多い傾向があります。1日1gの減塩によって収縮期血圧が約1mmHg低下すると報告されたこともあります。1日6gまでに抑えることが理想ですが、続かなければ意味がありませんので食事の楽しみを大きく損なわない程度からはじめましょう。
運動
運動することで血管が広がって血圧が下がり、血行が改善します。習慣的に行うことで筋肉量が増加して基礎代謝が上がり、減量にもつながります。また、ストレスの解消にも役立ちます。無理のない運動を習慣的に続けることが重要ですので、医師と相談して適切な運動内容を行っていきましょう。
嗜好品
喫煙は血管を収縮させて血圧を上昇させます。また深刻な呼吸器疾患の発症リスクも上昇してしまうため、禁煙しましょう。飲酒については1日に日本酒で1合(ワインはグラス2杯、ビールは500mL)までが基準飲酒量とされています。ただし国際的には日本の基準量が突出して多いため、この半分程度が適切であると指摘されています。
ストレス
緊張をはじめ、精神的なストレスは血管を収縮させて血圧が上昇する原因になります。十分な睡眠と休息を心がけ、趣味の時間をつくるなどでストレスの軽減を図りましょう。